FUN TO CAST (車とフライロッド)

 

少し前、ファンツードライブという言葉が使われました。自動車本来の目的は個人的な交通手段です。しかし、ステータスや趣味的な要素も多分に求められてきました。釣りも元来は糧を得るための猟だったのでしょうが、古くから趣味として伝わってきました。釣り竿も単に魚を捕らえるためのものではなく趣味の道具です。したがってその選択肢は人によって千差万別。大きく分けても機能、外観、経済性などがあります。

 

 

ファンツーキャスト。キャスティングが楽しいロッド。広く考えれば外観も含まれるでしょうが、ここではロッドアクションについて考えたいと思います。ファンツードライブとはワインディングロード、つまり適度に曲がりくねった道を快適な速度で走り抜けることを指すと思います。コーナリングで路面の状態、車の姿勢などを的確にドライバーに伝える車がファンツードライブです。安全且つ適度に高速でコーナーをすり抜ける醍醐味を味わえるからです。フライロッドにおいてもロッドの曲がり具合、ラインの状態などをキャスターに明確に伝えられるロッドが良いロッドだと思います。例えば、やたらスピードは出るがコントロールできない車は良くないように、やたらロングキャストはできても実際に釣りをすると良くないロッドもあります。余談ですが、ファンツードライブという概念はイギリスの丘陵を小型スポーツカーで走ることから生まれた言葉だと聞いた記憶があります。もちろんフライフィッシングもイギリスが発祥です。

 

 

自分の意思通り動く(使える)ものが良い道具だと思います。誰かのロッドを振ってみて「なんかこのロッドいいですね!」と言われることがあります。何となくではなくロッドの曲がり具合、ラインの状態などを普段使っているものよりよく把握できているからです。そして無意識のうちに修正もできてしまうからです。事実うまくキャストできています。自分のキャスティングは見えません。人に言われてもビデオで見てもタイムラグがあります。生の自分を見ることは不可能です。リアルタイムで自分のキャスティングを把握することは上達をずっと早めるはずです。

 

 

では、どんなロッドがファンツーキャストなのか。キャスティングスタイルが大きく違えば基準も変わるのは避けられないと思います。個人的な選択になってしまいますが、ある程度歴史があり優れたデザイナーやアドバイザーのいるアメリカのメーカーの中くらいより上のグレードのものでしょうか。すべてのロッドを振る機会はとうてい不可能なので(可能であったとしても)個人的な嗜好もあり趣味であるフライフィッシングの道具だということをご考慮ください。

フライフィッシングの中でも大きなウェイトを占めるフライキャスティングを楽しむことは、フライフィッシングの面白さを倍増させるはずです。その道具であるフライロッドの選択も楽しんでください。                                     1998

 


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